肩こり・腰痛・高血圧
当院で最近、実際に行った治療をもとに、一般の方にもわかるように臨床例を書いてみます。
問診
70代女性。
「どこが具合が悪いのですか?」と聞くと
「全身悪い」という答が返ってきましたので、もう少し詳しく聞きましたら、
「肩こり・左腰痛・左下腿のしびれ・右頭部がスッキリしない」
というのが今日の気になるところのようです。
患者さんで、過去の痛い思い出も現在の症状に含めて訴える方がいらっしゃいます。まあ、気持ちはわかるのですが、治療する立場からするとタイムマシンに乗って過去の症状まで変えられないのでご了承下さい。
鍼の経験の有無を聞くと、「右腰から下肢にかけての痛みが強かったときに1ヶ月ほど通ったがだんだん悪くなるので止めてしまった経験があるので、鍼はチョット抵抗がある」と言います。背中全体に鍼をされたそうです。
高血圧で薬を服用中ですが、昨日は結構上ってしまってフラフラして気持ちが悪かったと言います。左下腿のしびれと左腰痛は、長時間立っていると感じはじめるようなので、1分程立っていていただきましたところ、左腰が少し重くなる程度でした。
動作診
まず腰部。前屈しはじめるとき左腰が痛くなり、後屈すると腰全体がだるい。側屈は両方とも大丈夫。次に頸部。右に回旋させると右肩が痛み。左に頭部を傾けさせると右頸がツッパリます。
次に左肩。肩をすぼめるときと、腕を前方に挙上するときに、左肩の後面に痛みがでます。
触診
肩甲骨の間、背中、左のお尻、頭と頸のつけ根にかなり緊張状態があり、筋肉を横切るように触診すると非常に痛がります。お腹は、上腹部、右季肋部の緊張が強くあります。左下腿には、腓骨筋という筋肉があるのですが、右と比較するとやはり痛がります。
治療
右の季肋部と右の肩の筋肉を触診しながら、そこの緊張がゆるむツボを探索していくと、右足の親指の爪の際(人差し指側,F2)のツボを押すと反応します。実際にツボに刺激を与えて硬いところが柔くなるのを自覚していただいて、鍼をする了承が得られたので、その部分を治療することにしました。
爪の際のツボには、当院では井穴刺絡という手法を用います。針でツボをチョンと刺した後、そこから30滴ほど血液を絞るというやり方です。このツボにこの方法を試みた結果、先程痛みのあった動作をさせると、右肩、左腰ともに楽になったそうです。右季肋部と上腹部の緊張もゆるんでいます。
楽になったせいか今度は左の肩が気になりはじめたと言います。そこで、座らせたまま、左肩のコリを指標にしてツボを探ると左手の小指の爪の際(薬指側、H3)で反応します。このツボは、心臓と関係の深いと言われていますので、深呼吸をさせて息の入り具合をみてもらいます。息は入るけれど深く吸ったときに右の背中が痛いといいます。このツボに刺絡をしますと、左肩のこりもなくなり、息も深く入るようになりました。
この時点で、「ああ、ずいぶん頭もスッキリしてきた」と言われましたので、ずいぶんリラックスしてきたようです。
左肩を上げるときに、肩の後ろがまだ痛むと言います。この症状は左手薬指の爪の際(小指側,H5)のツボの刺絡で楽になりました。
最後に、降圧作用や、頸や腰の鎮痛作用のある頭の頂点にある百会というツボを刺絡して今回の施術は終了です。
3日後にまた来ていただくようにしましたが、その間、今日治療をしたツボにお線香で刺激して自己治療をしていただくように指導しました。
日頃、歩いたり、農作業をしたりして運動をしているかたなので、井穴刺絡に対する反応がすこぶるよいので簡単な治療ですみました。
こういう指先のツボの刺激をしても目的の症状が取れにくいという方もいらっしゃいます。そういう場合には別の方法論を用いますが、いずれにせよこういうような東洋物理療法では患者さん側の反応力が決め手です。
